いびき・無呼吸について

いびきって病気なの?睡眠時無呼吸症候群とは?

夜ぐっすり眠ること、それは毎日のことだからとても大切なことです。睡眠の重要性は従来から叫ばれており、一般的に睡眠の効果には、
・ストレスの解消(鬱病の予防)
・こどもの成長と成人の老化防止
・病気の予防
・記憶の定着
などが有名ですが、本当のところは未解明な問題も多々あります。

いびきの定義は難しくいえば、”睡眠時に気道が狭くなることで異常な狭窄音や振動が出現すること”ですが、緩んだ筋肉が粘膜をふるわせておこるガーガー、グーグーという音です。
狭くなるのは、鼻、のどちんこ付近、扁桃腺、舌の付け根(舌根)などで人によって理由が異なります。疲労やアルコールなど一時的ないびきは病的とはいえませんが、恒常的なものの中に、大きな病気が潜んでいる可能性もあり、注意が必要です。
いびきをかいても十分に深く眠りが取れている間は病気とはいえません。しかし度が過ぎるいびきはご自身の安眠障害になるばかりか、一緒に休むご家族にも迷惑をかけることもあります。さらに、最近マスコミでも取り上げられる睡眠時無呼吸症候群にまで進行すると、日中の活動低下、眠気の他、心疾患などのリスクも上がるため早期の診断治療が大切です。睡眠時無呼吸の診断基準は国際的に定められています。
ちょっとひとこと
■成人の睡眠時無呼吸診断基準
A + B または C の基準を満たした場合
A) 下記項目が1つ以上該当
・患者の訴える次の症状:眠気、充足感のない睡眠、疲労、不眠
・息こらえ、あえぎ、窒息感を伴い覚醒する
・ベッドパートナーあるいは他の観察者が習慣性いびき、呼吸の中断またはその両方を確認する
・高血圧、 気分障害、認知能力低下、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性心不全、心房細動、または 2型糖尿病と診断された患者
B) PSGまたは簡易モニター(在宅での検査:out of center sleep testing:OCST)が示す次の結果
睡眠1時間(PSGまたはOCST)計測1時間あたり5回以上の主として閉塞性呼吸イベント(閉塞性および混合性無呼 吸、低呼吸または RERAs)の存在
C) PSGまたはOCSTが示す次の結果
睡眠1時間(PSGまたはOCST)計測1時間あたり15回以上の主として閉塞性呼吸イベント(閉塞性および混合性無呼 吸、低呼吸または RERAs の存在

いびきの重症度

睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数と呼び、この指数によって重症度を分類します。なお、低呼吸(Hypopnea)とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3〜4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。
■軽症
5 ≦ AHI <15
■中等症
15 ≦ AHI < 30
■重症
30 ≦ AHI

いびき、睡眠時無呼吸の検査、治療

いびきの種類は呼吸の経路を図で追ってみるとわかりやすいと思います。いびきは鼻呼吸が妨げられたり、のどの狭い部分が影響したり、一方脳から生じたものであったりいろいろな原因が考えられます。
まずは”疑うこと”からスタートです。主にパートナーの方にご協力いただき、問診を取ります。無呼吸の出現頻度、その時の様子を観察して頂きます。
つぎに簡易検査に進みます。手の指に酸素が足りているかのセンサー、鼻に気流があるかのセンサーを取り付け、通常通りお家で寝て頂きます。
そこでデーター的に睡眠時無呼吸の重症度を推測し、必要なら精密検査を1泊入院できる病院に紹介します。医療機関では脳波などいくつかのセンサーを取り付けますが、痛みを伴う検査ではありません。
耳鼻咽喉科では鼻から細い管を入れて、鼻炎の有無、ポリープや腫瘍が無いか、狭い場所はどこかなどを詳細に観察します。扁桃肥大や鼻炎、副鼻腔炎など耳鼻科でないと診断がつきにくい場合もあります。
治療は長く続ける必要があります。侵襲の低いものから、マウスピース、CPAP療法、外科手術(扁桃摘出、鼻腔手術)があります。
■マウスピース
別名スリープスプリントと呼ばれます。下あごを上あごより前に引き出す固定具をつけ、いびきの発生を防ぎます。(必要に応じて歯科の先生に相談します。)
■CPAP療法
少し長くなりますが、”経鼻的持続陽圧呼吸療法”の略です。文字通り機械を装着し、呼吸を助ける治療です。機械を装着するのにコツがいるため、入院機関を紹介することもあります。
■手術療法
扁桃肥大や、鼻の通りが悪い時は専門的に手術を行う方がよいこともあります。私自身の豊富な手術経験から、手術適応を判定します。

いびきと耳鼻咽喉科との関係

特に私は、耳鼻科がこの疾患を扱った方が良い根拠に、ファイバーやCTでのどと鼻の形状をよりきちんと解析できること、鼻の通気やアレルギーなどをキチンと評価できることがあげられます。必要に応じて鼻の治療を先に行うことで、CPAPがより有効になったり、CPAPから離脱できる可能性もあります。たとえば副鼻腔炎や鼻中隔彎曲、アレルギー性鼻炎を治したり、アデノイド、口蓋扁桃を摘出することだけで気道抵抗は大きくかわります。
ちょっとひとこと
睡眠時無呼吸チェックリスト
■寝ている間(ご家族に聞いてください)
・大きないびきをかく
・いびきが時々止まり、大きな呼吸とともに再度いびきをかく。これを繰り返す
・寝汗をかくやすくなった
・呼吸の間隔がまちまち
・夜中に何度も目がさめてしまう
■朝おきたとき
・のどがカラカラに乾く、乾燥している
・頭痛がひどい
・しっかり睡眠時間をとったはずなのに熟睡感が乏しい
・なかなか起きられない
・体がだるく感じやすい
■日中起きているとき
・強い眠気が周期的に襲ってくる
・一日中だるい
・集中力が持続しない

これらが5個以上あれば一度耳鼻科を受診してください
みみ・はな・のど・くび