こども特有の症状

小さいお子さんをお持ちのお母様へ ~クリニックからのメッセージ~

こどもの病気はいつも”突然”やってきます!何の前触れもないことが多いものです。何人ものこどもを育てた経験のあるお母さんでも、急な発熱やのどいた、吐き気などいつもびっくりするものと思います。昔は現在のような核家族ではなく大家族であったために、おばあちゃんやおばさんなどアドバイスできる大人が周囲にたくさんいました。さらに、近所のやさしいおじさんや、ちょっと気の利いたおばさんが”どうしたの?”、”大丈夫よ!”、”こういう時にはこうしたらいいよ”などの適切なアドバイスをくれることも多く、地域社会全体でこどもを育てる風潮があったと思うのです。もちろん、今ごらんになっているインターネットやソーシャルネットは心強い味方ですが、それでもやはり”ヒトの温もり”を感じる社会のほうが心強いに決まっています。
わたしたちは、そのようなお母さんの気持ちに少しでも寄り添って医療を行うためにここにいさせて頂くのだという”スタッフの共通意識”と、安心の社会に少しでも関わらせて頂くという”強い責任感”、そして新しい地域社会のカタチを作っていくという”将来へのビジョン”の3本の柱を胸に、地域に根ざした医院を展開したいと願っています。
ひとつひとつが手探りですが、お母さんの声を聞きながら、ひとつひとつ作っていくのが楽しみで仕方ないのです。
例えば、病院のロゴデザインやイメージはイラストレーターの方やウェブデザイナーさんとひとつひとつ相談して決めていきました。”おやこあら”、というロゴ名前は”おやここあら”からとりましたが、こどもコアラをおんぶするお母さんコアラのイメージです。お母さんとこどもたちにどうすれば親近感を感じていただけれるか、より”怖くない”環境を提案できるか?少しでもクリニックで安心やくつろぎを感じて欲しい…….ひとつひとつの院内装置に意味を求め、壁紙のいろから動線まで丁寧に丁寧に検討させていただきました!春には桜並木が見える川沿いの、光降り注ぐ明るい東向きの窓と高い天井はそのような思いの現れのひとつです。来院されるお母さん、こどもたちと一緒に病院を育んでいければと思いますので、お気づきの点は何でもお話しください!(院内にご意見箱があります!)

こどもの発育と病気

こどもとおとなとの”体の違い”とは一体何でしょうか?

こどもはおとなのミニチュアではない

九州大学で小児科、小児外科をはじめて学んだ時に印象に残った一言です。
例えばこどもの各臓器は小さく見えますが一つ一つはきちんとした働きを持っている。しかし、その調和というか”したたかさ”が大人と比べ未熟で、不十分なのです。そのため熱をだしたり、下痢をしたりしながら免疫力などの”したたかさをひとつひとつ身につけていくのがこどもです。ちょうどことばや文字を覚えるのとよく似ています。ある小児科の先生のお話によると、こどもは1歳まで、3歳まで、小学校入学までの3つの大きな変化をえて、成長していくとのことです。

生まれてから1歳まで

お母さんからもらった免疫の”有効期限”です。この間次第にお母さん由来の免疫は少しずつ減少し、赤ちゃん本人由来の免疫細胞が増加します。胎内から外界に飛び出すことで、先天的に持っている体質や先天奇形による不調はこの1年で出てくる事が多いとされています。

1歳から3歳頃まで

この間にこどもは様々な外敵と戦い免疫力を獲得します。ムンプス(おたふく)などのウィルス性疾患にかかる事で生涯免疫を獲得します。発熱、嘔吐、下痢をおこしながら、もっともお母さんに心配をかける時期でもあります。耳鼻科的には耳管という鼻と耳の管の力が未熟なため、しばしば中耳炎を繰り返します。(くわしくは”耳鼻科で扱うこどもの病気”参照)

3歳から小学校入学まで

3歳までのような重篤な病気は減りますが、成長しきれていない弱い臓器に不具合が生じ得ます。腎臓、呼吸器系などのこども特有の病気がはっきりしてくる時期でもあります。

小学校以降

生殖器以外の臓器が大人に近づきこども独特の病は少なくなりますが、一部小学校入学前からかかっている弱い臓器は要注意です。
また、こどもは当然の事ですがおとなの様に自分の体の変化や不調を伝える言葉が不足してします。しかし、おとなと違って表情やしぐさなど”からだ”が”調子の悪さ”を教えてくれます。顔色や機嫌のよさ、動きの”はきはきさ”、落ち着きの無さなど、日頃こどもと接しているお母さんは”何となく調子悪そうだ”という直感が働く事が多いものです。私も医学生の時に”not doing well(何となく調子悪い)”という言葉を習い、しっくりこなかったのですが、こどもを持つ親になってみると非常に良くわかる一言です。こどもは言葉を上手に駆使できない代わりに表情や身振りなど全身のボディーランゲージとして私たちにたくさんのことを伝えてくれているのです!わたしたち耳鼻科医もそうした”声なき声”にきちんと耳を傾けなければなりませんが、もっとも有用なほとんどの情報はやはりお母さん方が持っているのです。

耳鼻科で扱うこどもの病気

■滲出性中耳炎
■急性中耳炎
■アレルギー性鼻炎
■小児副鼻腔炎
■異物
■アレルギー性咳嗽
■急性扁桃炎
■鼻出血
■習慣性扁桃炎
■アデノイド肥大
■いびき、睡眠時無呼吸症候群
■慢性穿孔性中耳炎
■先天性真珠腫
■中耳奇形
■感冒症候群(鼻風邪、のど風邪)

こどものアレルギー

こどものアレルギーの発症メカニズムは完全にわかっている訳ではありませんが、体内環境と周囲の環境要因の相互に関係していることがわかっています。”アレルギー素因”といってアレルギー体質のおこりやすさは遺伝的にある程度決定されます。お母さんかお父さんのどちらかがアレルギー素因を持っていればそのこどもはアレルギー体質になりやすいとされています。そしてお母さんの胎内にいる時に受けた抗原刺激はアレルギー素因と相互に影響しあいます。つまり妊娠中のお母さんの食事も非常に重要になってきます。その後も乳幼児期に与えられた食事の影響や家の中のハウスダストや花粉、カビ等の空気中の浮遊物が関係します。
アレルギーマーチとは、食物アレルギーをスタートとしたこどもの成長過程で刻々と変化するアレルギー体質の表現形をさします。赤ちゃんの”食物アレルギー”に始まり、”アトピー性皮膚炎、湿疹”などの皮膚炎、”下痢”などの消化器症状、”気管支ぜんそく”を経て小学生ごろからアレルギー性鼻炎が始まります。それぞれの病気は成長過程で軽くなる場合もありますが、一つないし複数のアレルギー疾患はおとなになるまで続く事になります。
アレルギーは”アレルギー性鼻炎”の項でも書きましたがもともと”必要な反応”過剰にでて害を及ぼしている状態で、ことわざを借りれば”過ぎたるは及ばざるのごとし”といったところでしょうか?アレルギーには必ず原因があり、原因物質の除去が対応の基本となります。ほとんどのお薬は症状を緩和させることはできますが、根本的にアレルギーをリセットする事はできません。
近年はアレルギーの原因物質を少しずつ体に取り入れならしていく治療もあり、耳鼻科領域ではスギ花粉とハウスダストの舌下免疫療法があります。しかしながらその効果は完全とはいえませんし、すべてのこどもに効果があるわけでもありません。また可能性は低いですが、アナフィラキシーといってショック症状などの副反応もありえます。
ちょっとひとこと
こどもの病気は小児科や皮膚科の先生との連携が大切です!例えば食物アレルギーなど
食物アレルギーは、0歳児が全体の約3割を占め、年齢がすすむにつれて減少します。ショックや呼吸困難まで行かなくとも、先にお話ししたように、こどもは予備能低いため、ちょっとした下痢や嘔吐でも脱水となりますので、全身疾患として小児科の先生にお任せした方が良いと言えます。アトピー性皮膚炎は保湿剤、軟膏などの選択から、やはり皮膚科の先生のお力が必要です。喘息は咳以外にも肺炎になる場合もありますし、大発作が持続する重積発作の場合には呼吸困難が強く危険ですので、小児科の先生による重症度診断が大切です。しかし、アレルギー咳嗽や咳喘息などの比較的軽症のものや、アレルギー性鼻炎は副鼻腔炎などと関係するため耳鼻咽喉科の得意分野と言えます。耳鼻咽喉科では、はなやのどの所見をとり、中耳炎も含めこどもに多い病を日常的に診ている事から、病状に応じてお互いに得意分野を紹介しあって治療にあたることが非常に重要です。
みみ・はな・のど・くび