漢方治療とは?
当院の治療の中心はあくまで西洋医学ですが、 “全人的医療”である漢方治療も積極的に取り入れています。漢方を取り入れてみたい方は遠慮せずお伝えください。
漢方治療は西洋医学と比べて解りにくい治療と考えられていますが、その理由の一つが治療目標の考え方の違いが大きいと考えています。西洋医学はとにかく“evidence based medicine(エビデンスに基づいた医療)”で統計的優位差(専門のデータ解析方法で薬などの治療効果の有効性を評価する手法で、科学的効果が証明される)が出た治療のみが“意味がある”医療として扱われる傾向があります。つまりデータできちんと改善を比較する数値目標が存在し、その科学的・統計学的比較が可能なこと重要になります。極端な話、高血圧の値の低下のような目にみえるデータの変化がないと“有効”と判断できないのです。
一方漢方は全人的治療(人の体を臓器や局所のみで切り取らず、人の体を全身の総合的バランスで診る医療)に入りますので、薬の作用点を特定しないで全身の症状を総合的に捉える医療といえます。
従って、効果・効能という着地点が高血圧の改善、血糖値の安定、頭頚部癌の腫瘍径縮小などの“目にみえる効果”ではなく、疲労感の改善、動悸の改善、咽頭不快感の軽減などの自覚症状の改善をエンドポイントとします。つまり最終的な自覚症状の軽減を目指しており、あくまで患者さんの満足度が重要になります。従って例えば高血圧の数値は改善したが倦怠感は変わらない、データの異常を認めない不快感が残るなどの“自覚症状メイン”の症状に意外な効果を発揮することがあります。このように漢方治療の目指す方向は患者さんの満足度改善にあり、データ改善中心の西洋医学治療とは全く異なるのです。
漢方理論について
ところで漢方理論は非常に複雑でそれだけで学問になります。
- 陰陽
- 内因・外因
- 五臓(肝・心・脾・肺・腎)
- 気血水
- 証(八綱)
などの漢方理論がありますが、詳しくは専門書を参照されてください。その中で特に重要となる“証”について概説します。
“証”とは漢方独特の考え方で、体力、体質、抵抗力などの人それぞれの現在の状況を症状、他覚的所見から総合して評価する一つの“体調”の指標であり、3つのファクターを組み合わせて8通りで示します。特に病勢を示す“実症”“虚症”が重要で、いわゆる気力がみなぎっているか、不足しているかで向かうべき方向性が全く変わってきます。
同じ“倦怠感”一つ例にとっても、エネルギー不足のだるさにはエネルギーを補ってやればよく(補気)、エネルギー過多の場合には薬で燃え盛る“気”を調整(理気)してやれば良いことになります。
耳鼻咽喉科で用いる漢方
耳鼻咽喉科でも漢方が特に力を発揮するのは“症状の改善”が目標となる治療目標で、めまい、咽頭異物感、咳、後鼻漏、咽頭痛、胸焼け(喉やけ)、倦怠感、嗅覚障害、味覚障害、舌の痛み(舌痛症)、嗄声などあります。
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耳の症状
- みみが痛い
- 聞こえが悪い
- めまいがする
- 耳鳴りがする
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鼻の症状
- くしゃみ、鼻水、鼻づまり
- 頬の痛み
- 鼻出血
- においがしない
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喉の症状
- のどが痛い
- のみこみにくい、むせる
- 声がかすれる
- のどがイガイガする
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- 漢方に効く症状とは?
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