本日2025.8.21,タレントの中川翔子さんがYahoo!ニュースで耳下腺腫瘍手術を受けたご自身の体験を発表され話題になりました。
女性タレントという職業柄、しかも顔面に近い腫瘍の手術ということもあり、合併症の顔面神経麻痺が生じた時には芸能界引退も考えられたとのことです。
耳下腺腫瘍(耳下腺がん)は私が九州大学や浜の町病院で最も専門としていた頭頸部腫瘍の一つで、耳の前から下に存在し、おたふく風邪で腫れる耳下腺にできる比較的稀な腫瘍です。以前は読売新聞全国版に記事が掲載されました。
だいたい約80%が良性でそのうち多くはワルチン腫瘍か多形腺腫という腫瘍ですが、多形腺腫は放置すると10年から20年というスパンで10%に悪性化を認めるといわゆる”耳下腺癌”となるため注意が必要です。女性に多くメイクや髭剃りでしこりを自覚することが多いですが、次第に大きくなり悪性の場合は顔面神経麻痺(顔の痺れ)をきたします。麻痺をきたすと目が閉じにくくなったり(兎眼)、口が動かず液体がこぼれやすくなります。
顔面神経麻痺は元々耳下腺の中に顔面神経が存在することから腫瘍の圧迫や浸潤で生じますが、悪性で起こることがほとんでです。
耳下腺腫瘍は超音波(エコー)で診断することがスタートです。当院は耳下腺腫瘍手術の豊富な経験を有する院長自らエコーで診察を行い、必要に応じて細い針で細胞の検査(エコーガイド下穿刺吸引細胞診)を行うことで、治療方針を検討します。場合によっては専門の病院でMRI検査を依頼します。
ここで重要なのは耳下腺腫瘍や首のしこりは経験数が豊富なドクターに相談する方が良いということです。耳鼻咽喉科専門医を有する医師であれば基本知識はありますが、手術経験が多い方がより専門性が高いと考えます。
また、意外に注目されないことでですが、エコー→細胞診検査→MRIと進むときにMRIをどのように行うのか、例えば造影剤を使った解析をするのかなど、放射線科読影にも経験値が必要であることです。当院でMR Iが必要な場合、きちんと診断できる放射線科読影医がいる病院でMRIをお勧めしますので、より診断の精度が上がる可能性があります。
中川さんもおっしゃっていましたが、セカンドオピニオンでは信頼できる病院を選択することが重要です。
私は以前日本口腔咽頭科学会でシンポジストと言って治療方針を全国の専門医で検討する中心人物にも選ばれましたので安心してご相談ください。
高性能エコーと豊富な手術経験で適切な治療をご提案します。なお当院は入院設備がないため、手術そのものは信頼できる病院に紹介しています。
ゆっくりご心配をお聞きするため、耳下腺腫瘍や首のしこりのセカンドオピニオンは火曜日午後の院長腫瘍専門外来にお越しください。なお事前予約は不要です。せっかくの豊富な専門性を活かして、少しでも中川さんのような悩みに寄り添ってお話しできればと思っています。
しらつち耳鼻咽喉科 院長 がん治療認定医 白土秀樹
いびきが以前新幹線運転士の居眠り運転をきっかけに社会問題になって久しいですが、一番の問題はいびきによって生じる睡眠時無呼吸が眠気、心疾患などに深く関わってくることです。睡眠時無呼吸症候群の診断は、簡易検査とPSG検査がありますが、簡易検査でCPAP適応判定目的に以前は近隣入院施設に入院していただき検査していましたが、今年からはご家庭で検査ができるようになりました(ポータブルPSG検査)。
(ノーザリー社HPより)
何れにせよいびきは無呼吸のレベル判定がすべてのスタートとなります。
いびきの原因は多岐に渡りますが、耳鼻咽喉科は上気道である鼻や口腔、舌などいびきの発生部位の専門診療科であり、レントゲンや、鼻腔通気度検査、CT,、ファイバーなどの正確な局所検査が必須です。アレルギーが原因の鼻閉にはRAST検査というアレルギー検査で体質チェックを行います。(結果ハウスダストなどのアレルギーがいびきの原因となっている場合には、舌下免疫療法といって体質改善はいびき軽減に役に立つ場合もあります)
当然鼻中隔弯曲や肥厚性鼻炎など解剖学的狭窄による”鼻いびき”が疑われる場合には手術が先行する場合もあります。同様に扁桃肥大でのどの入り口が狭場合には扁桃摘出の手術を行わないと治療がうまくいかないこともあります。
軽傷の無呼吸ではマウスピース(スリープスプリント)で制御できることもあります(歯科で歯形を取ってもらいます)が、重症ではCPAPと言ってマスクを装着して眠る治療が必要です。
CPAPは条件を満たせば、保険診療となり3割負担で月5000円ほどで機械のレンタルが可能です。ただし医療機器ですので適切なデータ管理が必要ですので月1回の来院が必要です。
軽傷の場合は舌根が落ち込むことが無呼吸の原因となりますので、横を向いてねる枕(抱き枕、背中固定枕、仰向き警告装置)などが有効です。
心不全などの重症呼吸管理が必要な場合は専門性の高い内科に紹介となります。
日本は4つのプレートが交差する場所に位置しているため、世界的にみても常に大きな地震のリスクにさらされています。
先日も宮崎沖で地震が発生し、南海トラフ地震の関連が心配されました。
福岡でも2005年3月20日午前10時53分に福岡県北西沖玄界灘を震源とするマグニチュード7.0の地震が発生し、被害は少なかったものの多くの物的被害が生じました。その後から”地震が起こってないのに揺れている感じがする””何が常にフラフラして気持ち悪い”という患者さんが多く受診されました。
当時私は九州大学病院に勤務していたのですが、外勤先で多くのめまい患者さんを診察したのを覚えています。近年乗り物酔い(動揺病)の研究も進んでおり、その関連疾患として
地震後めまい症候群(Post Earthquake Dizziness Syndrome: PEDS)
という病態が明らかになってきました。
これは大地震を経験した人が特に地震がない時でも常に地面が揺れているように感じる病態で、地震時に感じた揺れを深部知覚や前庭の情報として”動揺感覚の蓄積”が生じ、不安などの心理的ストレスを引き金としてあたかも揺れているような感じが持続するものです。
中でも、乗り物酔い(動揺病)を起こしやすい、心配性、運動不足の方に多いとされ、数ヶ月の経過で自然に消退するとされています。
治療法はめまい薬、抗うつ・不安薬などとカウンセリングが中心になります。
また、不安を煽るテレビなどの画像情報やSNSなどをできるだけ見ないようにすることや、めまい自覚時には体を動かし足元ではなく遠い景色を眺めること、適度な運動習慣や良質な睡眠に気をつけることも重要です。
首は髭を剃ったりネックレスをつけたりと比較的日常生活で触れることの多い場所です。通常首には”見張りリンパ節”が存在し、口や喉などの頭頸部の炎症に反応して大きくなったり小さくなったりを繰り返しています。
虫歯や口内炎ではしばしば顎の下にグリグリができ、抑えると痛い場合もありますが、これはもとの病変が縮小すれば次第におさまってくるのが特徴です。つまり炎症によるリンパ節病変の診断は時間を空けて再度診察を受けることが重要です!
亜急性壊死性リンパ節炎は1972年に我が九州大学の菊池先生が多数のリンパ節生検の標本を検討し、悪性リンパ腫と紛らわしいものの、良性のリンパ増殖性病変として報告したことが発端とされる病気であり、現在も国際的には名前を取って”菊池病”と呼ばれます。片側の痛みを伴うリンパ節腫大が特徴で、20歳から40代までの比較的若い女性に多く、比較的長い数週間の腫れで病院を受診されます。エコーで片側の癒合する多数のリンパ節があり、発熱、圧痛が中心です。抗生剤が無効、ステロイドがよく効きますが、先に悪性の除外を行うことが最も重要です。そのため、紛らわしい場合には針を刺して細胞を検査する細胞診も行います。
私は4年間九大病理学でリンパ節生検の病理診断を行ってきましたが、組織学的には様々な細胞が入り乱れて”多彩な”病理像をし呈します。悪性リンパ腫は均一な印象ですので生検で診断をつけますが、自然に縮小することが多いためしばらく対症療法でフォローすることが多いです。菊池病は自己免疫によるものと考えられており、人に感染ることはありません。
当院はがん治療認定医の院長が高性能エコーを用いて首のしこりの診断をつけます。
毎週火曜日午後は腫瘍外来で首のしこりのセカンドオピニオンを受け付けています!もちろんそれ以外の日でも診察させていただきますが、お話しする時間を取りたいので、土曜日以外にご来院いただければ幸いです。 (さらに…)
”聞こえているのに聞こえない”
そんな”誰にもわかってもらえない”苦しみを抱えておられる患者さんが数多くいらっしゃることが最新の研究で明らかになってきました。当院ブログでも数年前から連載している聴覚情報処理障害という病態です。
現在では”聞き取り困難症(Lid)”と合わせて、Lid/APDとも呼ばれています。
その病態、治療法などは未だ確定していないのが特徴ですが、今年の4月にAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構:全国レベルで重点疾患を研究する組織)で仮の診断基準が作成されました。
LiD/APD診断と手引き(2024第一版)として31ページからなる報告書が執筆されましたが、その執筆担当者の中のひとりが我々九州大学元助教の土橋奈々先生です。去年までなんと診断基準すらまともになかった疾患ですので、今後の病態解明、治療法開発への大きな進歩といえます!
試案となっていますが、現在はこれで診断して良いということになっており、要点は次の3つです。
1)純音聴力検査正常(4分法という測定値で25dB未満、かつ特定の周波数で25dBを越えない)
2)語音明瞭度(言葉の聞き取り検査)正常(85%以上)
3)聞き取り困難の自覚症状がある(小渕式109点以下など)
つまり、言葉の聞き取り検査までできればクリニックレベルで確定診断が可能であるということです!
当院ではこれまで2017年からフィッシャー式で判定してきましたが、2024年9月以降は診断基準確定に従い小渕式に変更しました。これにより希望されれば当院でも診断書の発行が可能です。
ただし、基本九州大学で更なる精密検査をお勧めしています。(九大は専門外来を有する福岡唯一の施設ですが、2024現在1年以上の検査待ちがあります!)それは手引き第一版にも記載されていますが、
聴覚情報処理検査 (Audiory processing test; APT)、雑音下聴取検査、方向感機能検査などの特徴解析が重要だからです。これらによりLiD/APD患者さんの中にもどの聞き取り能力が欠如もしくは低下しているかがわかり、日常生活や社会生活での注意喚起も可能です。当院ではこれらの検査ができません。またLiD/APDはADHD(注意欠陥・多動障害)やASD(自閉症スペクトラム障害)の一部症状である可能性があり、これらは心理検査や発達検査(WAIS,WISC)が必要です。これらの疾患を認めた場合は投薬や精神科的アプローチも重要となります。
ただし、重要なのは大学でこれらの検査を行なっても、現段階で有効な治療法はありません。また、完全に聞こえるようになる機器もありません。この病気の重要な点は、”社会的生きにくさ”の理解と周囲の環境調整を行うことです。APD/LiD の支援の方法は診断後の介入で、これは音声入力 情報の調整、環境調整、機器を用いた情報強化、 トレーニングの4種類からなります。”聞こえているのに聞こえない”とは”走れるけと足が遅い”ことに例えらえ、走れない(聞こえない)わけではないのに、早く走れない(聞き取りが不得手)であることからくる”社会的生きにくさ”を少しでも軽くできるかどうかということが重要になります。
当院には”ブログを見て”遠方からたくさんの患者さんが来られます。私たちはクリニックでこれらの患者さんに道筋をつけることしかできませんが、今まで分かってもらえなかった苦しみに少しでもお役に立てればと思っています。
昔からキウイで唇が腫れる人がいることは有名ですが、果物や野菜の一部にアレルギー反応を起こしやすいものがあることをご存知でしょうか?
”口腔アレルギー症候群”と言って、花粉症の人に特定の食べ物が過敏に反応することがあり、これは花粉ごとに異なります。
例えば、すぎ花粉症の人の中にトマトを食べると調子が悪くなったり、夏の花粉症であるイネ科アレルギーの方の中にメロン、スイカなどのウリ系の果物や、キウイ、ピーナッツで痒くなる方もおられます。症状は食べて数分から起こり次第に時間と共に消えるのが普通ですが、アナフィラキシーと言って強い反応をきたせば呼吸が苦しくなったり、血圧が下がったりして危険な場合もあり得ます。
花粉症があるから必ず食物アレルギーを生じるわけではないのですが一度でも、かゆみ、蕁麻疹、唇や喉のイガイガを感じたことがある方はぜひ一度ご相談ください!これは共通抗原と言って、花粉の分子構造と果物や野菜の分子構造が類似していることで起こる”交差反応”と言われるもので、意外に多いものです。加熱したり、花粉飛散時期以外には症状が出にくくなることもありますが、一度反応が起きた果物や、初めて果物食べる小さなお子さんに十分に注意してください。
食べていいかはっきりさせたい時は、専門の施設で食物負荷試験を検討します。
5月のGW明けからイネ科のカモガヤ、オオアワガエリの飛散が多くなっています。すぎ・ひのきの樹木花粉と異なり、これらの”雑草花粉”は遠くまで飛散しないため、雑草にむやみに近づかないことが重要です。症状強い時にはお薬で治療しますのでご相談ください!
河川敷にもイネ科の花粉がありますのでご注意ください!
顔面神経麻痺とは主として片側の顔の動きが悪くなり、目が開きっぱなしになる(兎眼)、口元からものがこぼれるなどの不快な症状が生じる病気ですが、ほとんどが末梢性(脳に異常がない)麻痺です。顔の痺れ以外に口がまめらない、片側の手足の痺れがあるなどは脳の病気を疑いますのでまずは至急頭の画像診断を受ける方がいいのですが、他には何もないのに顔の痺れだけがある場合にはまず耳鼻咽喉科受診を考えてください!
なぜ耳鼻科が専門性が高いかというと、顔面神経麻痺の大半は耳鼻科領域の炎症(顔面神経炎)に原因があり、顔面神経の側にある蝸牛神経に炎症が起こると聞こえが悪くなりますし、前庭神経の炎症はめまいを生じます。また耳の中に水疱形成があったり耳たぶが赤く痛くなるなど、耳鼻科の診察が病気の原因を予測する材料となることが多いのです。
検査も、めまい検査、聴力検査の他、特徴的なのは顔面神経から枝として分岐する鼓索神経(味覚)、大錐体神経(涙の分泌)、あぶみ骨筋神経(大音響の反射的防御)などから顔面神経の原因や炎症の強い場所を推測することも可能です。また、顔面神経麻痺の治りを予測する検査(ENoG検査)で症状出現後1週間以降の状況で電気刺激を行い、治療方針の決定に役立ちます。
治療は入院でステロイド点滴を行ったり、外来で抗ウィルス薬を内服したりします。治りの悪い可能性が高い時は顔面神経管解放術という耳科手術を行う場合もあり、耳鼻咽喉科が専門性が高いと言えます。
治療効果は発症後いかに早く治療を開始するかに関係するので、顔が痺れたらとにかく早く病院を受診することをお勧めします。
気象の関係か飛行機雲が綺麗でした!
お盆期間中の8月12日は朝から菊池先生との2診体制です。長期おやすみの病院も多いと思いますが、今年は夏休み中のお子さんのお耳の診察やちょっと帰省前の診察を考えて、朝から夕方まで頑張りますのでよろしくお願いします。なお明日13日から15日までお盆休みをいただき、16日土曜日は通常通り午前のみ診察しますのでご不便おかけしますがご了承お願いします。
先日知人のドクターのジャズライブを堪能させていただきました。素晴らしい演奏ありがとうございました!
舌下免疫療法とは10年ほど前から保険適応となった、アレルギー体質改善の画期的な治療法です。現在すぎ・ひのき用とダニ・ハウスダスト用の2種類が保健適応となっています。3年から5年という長期治療が必要ですが、完全寛解を含めた有効率はすぎで80%以上、ひのきでも60%程度です。当院は舌下免疫療法指定施設で全国有数の症例数(1900例)経験があります。
4月25日現在すぎ花粉飛散はほぼ終了し、ひのき花粉量も少量です。アナフィラキシーなどのアレルギー反応を回避するため、ひのき飛散終了次第2025今年度すぎ舌下免疫療法開始します。
当院では5月26日から今年度の舌下免疫を開始します。 (さらに…)
今年は花粉飛散量が非常に多いため、例年以上に症状が強い方が多い印象です。花粉症には基本的に初期療法(予防投与)といって花粉飛散の数週間前から抗アレルギー薬を予防的に飲んでおくのが効果的ですが、根本的治療はなんといっても舌下免疫療法です!4年程度の長い治療期間が必要ですが、今年のような強い花粉症の年には症状がほとんど出ずに”舌下をしていてよかった!”と満足度が非常に高い方が多いので今年からでも開始するのを勧めています。
花粉飛散が終わった6月ごろから開始することができますので、費用やシステムなどスタッフまで気軽にお問い合わせください。
臨床教授として恒例の九大医学部学生講義のお仕事のため、4月16日水曜日は菊池先生の代診となりますので宜しくお願いします。
当院は丁度9年前の開業直前に餅まきをしましたが、この5月に開業する後輩の小児科の先生の棟上げ式に参加させていただきました。当時を思い出し胸が熱くなりました。